Vol.14 Women of Style

いつの間にか街路樹も色を変え、黄色や朱に染まった落ち葉に見惚れるばかり。この時期は日本と同じく、ニューヨーカーもセントラルパークや郊外の自然溢れるエリアを訪れては、紅葉を楽しみます。その手には暖かいコーヒーやパンプキンスパイスラテなんて季節のドリンクを携えて。公園のベンチでひとり読書をするもよし、友人や恋人とそぞろ歩きを楽しむのもよし。あくまで、秋のムードに酔いしれることが醍醐味なのかもしれません。

さて、多くの女性に手に取っていただいているVASICですが、VC NOTEでは各都市の素敵な女性たちもフィーチャーしていく予定です。今回が初となるWomen of Styleは、ニューヨークからデザイナーのバットシェバ・ヘイさん。

From Lawyer to Fashion Designer

賑やかなテキスタイル、襟や胸元に大ぶりなラッフル、そしてボリューミーなパフスリーブ……「バットシェバ」のドレスには一目でそれとわかる独自のスタイルがあります。「大草原の小さな家」を想起させるような西部開拓時代の装いやアーミッシュ、ジューイッシュの肌を露出しない“慎ましい”モデスト・ファッションにインスピレーションを得て、ファッショナブルなデイリーウェアとして進化させているユニークなブランドです。

「ブランドを始める前は、弁護士だったのです」と語るバットシェバさん。優秀な弁護士として申し分のないキャリアを築いていたものの、次第に疲弊していったといいます。そんな頃、ドレス好きだった母親の影響でヴィンテージドレスを集めていた彼女はある日、「ローラ・アシュレイ」の古いドレスが修復不可能なほど破れてしまったことから、それをもとに新たなドレスを作ることを思いつきます。パターンを作ってもらい、ネットで購入したヴィンテージ生地を使い、さらに袖を膨らませて、ひらひらとしたラッフルで首周りを詰めて。そんなドレスを着て、アッパーウェストサイドを闊歩するバットシェバは当然目を惹き、多くの女性たちから「どこで買ったのか?」と尋ねられたといいます

Big Wave of Prairie Dresses

そうして2016年に誕生したブランドは、スタートから瞬く間にレナ・ダナムやマーゴット・ロビー、セレーナ・ゴメスといったセレブの心を掴みます。また、ファッションの多様化で、ムスリムやユダヤの女性のモデストファッション需要が高まっていることも、追い風となっているようです。バットシェバいわく、「慎ましやかなファッションを着ていても、実は反骨精神を持っていたり、バッドガールだったり。ギャップのある女性らしさがおもしろいのだと思います」。

そんな言葉を裏付けるかのように、コレクションの発表の仕方も毎回意表を突いています。ニューヨークのクリエーターをモデルに起用してダイナーで披露したり、大学の法学部講義室でランウェイとレクチャーを設けたり、コートニー・ラブを筆頭にクリスティーナ・リッチーらが出演したショーもありました。

最近ではヨーロッパ市場でも存在感を発揮していますが、バットシェバさんは「ユニークなファッションを好む日本の女性たちにぴったりだと常々思っているの」とニッコリ。ベーシックスタイルが好きな女性にとって、「バットシェバ」の服は非日常的に見えて躊躇してしまうこともあるかもしれません。でも、ニューヨークの女性たちは、年齢に関係なくこのガーリーなドレスを堂々と着こなしていて、それが素敵なのです。世にまかり通った“普通”に左右されることなく、自分のスタイルを楽しもうという心意気こそ、おしゃれの大事な栄養素なのかもしれません。

 

Batsheva

https://batsheva.com