Vol.26 Summer Films

夏の映画と聞いて連想するものは何でしょうか? 灼けつく陽射しや夏の夜の匂いだったり、切ない恋物語やミステリーだったり。この季節だからこそ、改めてまた観たくなる作品があります。今回は季節を意識した特別コンテンツとして、「VASIC的夏の映画リスト」をお届けします。ストリーミングサービスを駆使してお家での映画鑑賞の参考にしてみてください。

The Talented Mr. Ripley

「リプリー」
50年代のニューヨーク、アルバイトで生計をたてる貧しい青年トム・リプリー(マット・デイモン)はある日、大富豪からイタリアで放蕩生活を続ける息子ディッキー(ジュード・ロウ)をアメリカに連れ戻して欲しいと依頼される。素性を偽りディッキーに近づき親しくなったリプリーは、美貌と富に恵まれたディッキーに特別な憧れを抱いていくーー。同性愛の耽美的要素と、劣等感と上昇志向に支配されたソシオパスの人物像が優れた心理サスペンス劇を構成。

原作は女流作家パトリシア・ハイスミスの小説。1960年にアラン・ドロン主演でレネ・クレモンが監督を務めた「太陽がいっぱい」も有名ですが、こちらは1999年にアンソニー・ミンゲラ監督の作品。奔放で傲慢な御曹司を演じたジュード・ロウの美しさと、イタリアでの豪奢なバカンス描写に思わずうっとり。かと思えば、リプリーの陰湿さをマット・デイモンが巧みに体現していて、とてもスリリング。

Stand by Me

「スタンド・バイ・ミー」
1959年オレゴンの小さな町。文学少年ゴーディをはじめとする12才の仲良し4人組は、行方不明になった少年が列車に轢かれて野ざらしになっているという情報を手にする。死体を発見すれば一躍ヒーローになれる!4人は不安と興奮を胸に未知への旅に出る。たった2日間のこの冒険が、少年たちの心に忘れえぬ思い出を残した・・・・・・。(ソニー・ピクチャーズ)

好きな映画ランキングでも必ず名前の上がる青春ノスタルジーの名作「スタンド・バイ・ミー」。何度見返してもピュアな少年たちの姿は色あせず、ホロリとしてしまいます。今作や「グーニーズ」にインスパイアされたNetflix「ストレンジャー・シングス」も一緒にオススメです。

Do the Right Thing

「ドゥ・ザ・ライト・シング」
その年一番の暑さを記録する夏の一日を機に、ブルックリンの住民たちの人生が一変してしまう。ベッドスタイ地区のピザ屋でイタリア系アメリカ人と黒人のいさかいが地域の人種間の軋轢に火を注ぎ、暴動へと発展する。

監督のスパイク・リーがビビッドな色調とユーモアを散りばめたこの社会派ドラマで人種差別問題に一石を投じたのは30年以上前のこと。あれから変わらず、いまだ黒人差別問題で揺れている今だからこそ、また鑑賞したい1本です。先ごろ、「人種問題はパンデミックだ」と声を上げたスパイク・リー監督ですが、新作「Da 5 Bloods」もNetflixで配信スタートされたばかり。これを機に根の深い社会問題を学んでみては。パブリック・エネミーの「Fight the Power」が映画を通してこだまするほか、サウンドトラックも秀逸です。

The Endless Summer(1966)

「エンドレス・サマー」
「ビッグ・ウェンズデー」の原点となったサーフィン映画の金字塔的作品。イク・ハイソンとロバート・オーガストの二人のサーファーが伝説の波を求め、世界中を旅する姿を追ったドキュメンタリー。

日本では見ることのない、まるで生き物のように荒々しくうねる世界の波の映像は必見。サーファーたちの人懐っこいキャラクターにも魅せられ、観終わる頃には、「サーフィンをしながら旅してみたい」なんて思ってしまいますよ。

Claire’s knee (1970)

「クレアの膝」
結婚を控え、独身最後の夏を過ごすためアヌシー湖畔のリゾート地を訪れた外交官ジェローム。そこでローラとクレールという二人の少女に出会うが、ジェロームは次第にクレールの膝に魅せられ、何とかして触れたいという欲望を膨らませていく。

ミニスカート姿の10代の少女たちのすらりとした足は、ジェロームでなくとも思わず見惚れてしまうほど。男の欲望を描いた本作ですが、エリック・ロメールの映像美は風景や気候を肌で感じさせるように叙情的で、まるで詩集を読み終えた後のような感覚にさせてくれます。うら若き乙女のふわふわとした様、中年男性のやさぐれ感みたいなものが、ひと夏の映像として目に焼きつきます。

Contempt (1963)

「軽蔑」
劇作家ポールは、映画プロデューサーのプロコシュに、大作映画『オデュッセイア』の脚本の手直しを命じられる。そんな夫を、女優である妻カミーユは軽蔑の眼差しで見つめていた。映画のロケのため、カプリ島にあるプロコシュの別荘に招かれたポールとカミーユ。ふたりの間に漂う倦怠感は、やがて夫婦関係の破綻を導き、思いがけない悲劇を生む……。(「軽蔑」オフィシャルサイト)

ヌーベルバーグの旗手ジャン=リュック・ゴダールが当時のスター女優ブリジット・バルドーをヒロインに、原色の映像で愛の悲劇を紡いだ作品。バルドーの美貌と60年代ファッションがとにかく素晴らしく、終始「かわいい!」と連呼してしまいます。観念的なセリフが多いのもまた、フランス映画らしくて気分を盛り上げます。

La Piscine (1969)

「太陽は知っている」
南仏でバカンスを過ごすジャン=ポール(アラン・ドロン)と恋人のマリアンヌ。そこへ友人ハリーが娘のペネロープを連れて訪れる。売れない作家のジャン=ポールは、音楽業界の成功者ハリーへの劣等感と、彼とマリアンヌがかつて恋人だったことへの嫉妬で心がざわめいてゆく。そんなジャン=ポールを挑発するように、ハリーはマリアンヌに接近。一方、ペネロープは父への反感からジャン=ポールに好意を抱く…。(スターチャンネル抜粋)

アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー、ジェーン・バーキン……キャストのルックスの眩しさが突出したサスペンススリラー劇。全体に漂うちょっと気だるい雰囲気もおしゃれな南仏バカンスにはつきものなのかも? 若きジェーン・バーキンのミニワンピース姿やスカーフ遣いなど、ファッションのヒントも満載です。