Vol. 3 Streets of VASIC

What New Yorkers Love

ファッションの街、芸術の街、ビジネスの街……あらゆる分野に優れているニューヨークですが、ここは間違いなく食の街でもあります。毎週のように新しいレストランが誕生しては、食のトレンドが形成されています。かつて「ニューヨーカーは行列に並ばない」なんて説もありましたが、それも今は昔。話題のお店がオープンすれば1時間待ちなんて当たり前、街中で行列を見ることも珍しくなく。

とはいえ、流行の中心にあるものは急速な発展を見せますが、短命に終わることもしばしば。それは食であれ、ファッションであれ同じこと。ビジネスの競争が激しく、人々が良くも悪くも飽きっぽいニューヨークで愛されるものは、本当にいいものだけ。そんな“本当に愛すべきモノやコト”をここで紹介していきます。

Best Italian Restaurant

気鋭の女性シェフ、ミッシー・ロビンソンが腕をふるうブルックリンのモダンイタリアン「Lilia」。予約が取れないと評判のこちらは、ウィリアムズバーグの中心地からちょっと外れた静かな一角にあります。

オープンから2年が経っているものの、人気はいまだ衰えず。お店にはいつも夕方5時くらいから、予約のない客が当日のテーブルを狙って行列を作り始めます。毎晩12時になると1ヶ月先のテーブルがオンライン予約できるのですが、ものの数分で満席に。PCの前で待ち構えてないと予約ができない “ホットレストラン”なのです。

ノルディックデザインを彷彿とさせる白を基調とした店内は天井が高く、インダストリアルな雰囲気を残しつつ上品にまとめられています。

ミニマルなセラミックウェアで提供される料理は、ハーブや香辛料を絶妙に駆使しながら潔いほどシンプルに仕上げていて、洗練されているのが特徴。自家製モッツァレラ、トランペットマッシュルームのロースト、アーティチョーク、フグなど、素材の味が驚くほどストレートな皿が充実しています。グルメ批評家たちも太鼓判を押す自家製パスタは絶品。

素朴で骨太な昔ながらのイタリアンとは異なり、女性シェフならではの軽やかな創作こそがこの店の特徴です。イタリア料理のモダンな解釈には、いかにもNYらしいと言えるでしょう。

ちなみに、今年の夏には同じくブルックリンにパスタ専門の姉妹店「Misi」も登場しました。こちらは「Lilia」よりももっとシンプルでミニマルなインテリア。メニューのカテゴリは前菜とパスタ、デザートのみ。店の自信を感じさせます。

メニューを見るとごくシンプルな料理が並んでいるかと思いきや、登場する料理はひねりが効いていて、その+αの技が本当に秀逸。エアルームトマトの皿にしても、スパイスを閉じ込めたハニーに、バジル、ミント、フェンネルと数種類のハーブを駆使。いつものトマトの味を裏切り、複雑に折り重なる風味を楽しませてくれます。目玉のパスタも言わずもがな、格別の味。

フレッシュパスタはどれを食べても、ソースや具に負けない生地の美味しさが光ります。他にはない珍しい種類も多く、アニョロッティなど中身を詰めたタイプが特に人気の様子。

どちらもカジュアルな店構えでありながら、落ち着いた大人の時間を過ごせます。

NYではすでに初雪も降り、長い長い冬がついに始まりました。ロングコートに大判のマフラーを巻いてもなお寒風に体が強張る夜も、こうしたちょっといいディナータイムのためならば外出も苦ではなく。

もちろん、肩にはVASICの“CITY”をかけて。

Lilia https://www.lilianewyork.com

Misi https://www.misinewyork.com