Vol.46 Streets of VASIC

何年ニューヨークに住んでいようとも、この街の風景に改めて心ときめく瞬間があります。そのひとつが、川向こうや高所から摩天楼を眺めるとき。新旧織り交ぜた建物が群生する半島の地形にアイコニックな橋がいくつも架る、その圧倒的なスケールと美しさを前にすれば、観光で訪れる人々と同じように自然とカメラを構えてしまうもの。なお、ニューヨークではパンデミックもお構いなしに高層ビルが次々に建設されているとあって、実は最近、奇想天外な新しい展望台が登場しているのです。

SUMMIT One Vanderbilt

今最もホットなデスティネーションとなっているのがこちら。グランドセントラル駅の隣にそびえ立つ高さ427メートル、93階建のオフィスビル「One Vanderbilt」は、法曹や金融界の大手オフィスが入居するニューヨークの新しいパワーシンボル。その最上階4フロアを占める展望台「SUMMIT One Vanderbilt」が昨秋オープン。実はこちら、ただ高くて眺めのいい場所、ではないのです。

ここはエクスペリエンスを重視したかつてない展望台。見るだけでなく、五感を使ってニューヨークを体感できる演出が施されています。そもそも、この展望台部分は世界的建築デザインオフィス「Snøhetta」が設計したとあって、足を踏み入れた瞬間からその場を去るまで、研ぎ澄まされたシャープな空間美がゲストを歓待してくれます。

Immersive Experience

さらに、エリアによって数々の衝撃的な仕掛けが。「Air」は、デジタルアーティストKenzo Digitalによる“没入型”インスタレーションの空間。ミラーガラスを張り巡らした吹き抜けの空間にニューヨークの景観が無限に映り込み、街と自分が一体化しているような感覚に。夜ともなれば夜景の煌めきの中に包まれ、かつてない幻想的な体験ができます。さらに、別のギャラリースペースには草間彌生のメタリックなオブジェも鎮座していて、天上という非日常の空間に瞑想的な時間をもたらします。

一方で、スリルを味わいたければ、建物から空中に突き出たガラス張りのボックス空間「Levitation(レヴィテーション)」へ。足元を見れば約300m下まで透けており、その高さに思わず腰が引けてしまうほど。いくら安全だとわかっていても、高所恐怖症の方はご注意を(笑)。そして、せっかくこんな高い場所まで来たのだから、なるべくゆっくり長く過ごしたいという気持ちに応えてくれるのが、93階のフロアにあるカフェバー「Apres(アプレ)」。ニューヨークの有名レストラングループによるカクテルやフードをいただくことができます。

そして展望テラス「SUMMIT Terrace」に出れば、まさにそこは空中散歩を楽しむべき場所。時間ごとに変わる空の模様とニューヨークのスカイラインを思う存分、目に焼きつけて。また、建物の外側に吊るされたガラス張りのエレベーター「Ascent(アセント)」に乗り、ミッドタウンで最も高い地上364mの地点へと上がるのもエキサイティングです。

今までは、ニューヨークで展望台といえばエンパイアステートビルやロックフェラーセンターの展望台が王道でしたが、このかつてない“体験型展望台”の楽しさを知ってしまうと、この人気の凄まじさも納得。次にニューヨークを訪れる際は、是非こちらをチェックしてみては。

次回は、2022年春の新作をご紹介していきます!