Vol.9 Streets of VASIC

春の芽吹きから新緑が眩しい季節になりました。四季のある日本には季節を愛でる繊細で美しい言葉が豊富にあり、日常的に季節のうつろいを言葉にしたためる慣習もあるため、とても感性の豊かな国といえます。これから長雨の続く梅雨になりますが、それも緑を一層濃く見せるとともに、エネルギーがわいてくるような夏の太陽を心待ちにさせてくれます。そうした季節ごとに抱く感情を、VASICのバッグとともに共有していただければ幸いです。

KANOKO’S GO-TO SPOT

さてニューヨークは、5月だというのにヒーターが稼働した底冷えの日があったかと思えば、真夏日もありました。VASIC クリエイティブディレクターのKanokoはこの街を拠点に、東京、パリ、香港などを頻繁に行き来する暮らしを続けています。デザイン企画はもちろん、工場とのコミュニケーションや、素材選び、ショップや展示会の装飾、コラボやノベルティの提案まで、すべて自身がその地に赴いて行うため、余白のないスケジュールに追われるばかり。でも、そんな彼女がニューヨークでほっと心を落ちつけられる、とっておきの場所があるのです。

LITTLE PARIS IN WEST VILLAGE

ウェストビレッジのカフェレストラン「Buvette」は2011年のオープン以来、地元ニューヨーカーから観光客までを魅了し続けている人気店。にぎやかなショップが連なるBleecker Streetのそばにありながら、扉を開けるとそこはパリのエスプリが投影された空間です。店内はブロカント(小道具)やドライフラワーがセンスよくしたためられ、コースターやメニューのデザインもエレガント。エプロン姿に白シャツ&タイという出で立ちのスタッフたちもどこか垢抜けた印象です。女性オーナーシェフ、ジョディ・ウィリアムズの細部にわたるまでのこだわりをひしひしと感じられるよう。

パリとの馴染みが深いKanokoも、「クリーンでモダン、白く整ったニューヨークらしさも好きですが、このごちゃごちゃしたような生活感を醸すフレンチの雰囲気は懐かしいようで安心感さえあり、目にもとても優しいのです」と語っています。

この店は朝から夜まで通しで営業しているため、いつでもお客を迎え入れてくれます。週末のブランチは1時間待ちも当たり前というほど混んでしまうのですが、平日の朝や夜は新聞や本を片手にふらりと訪れる常連客が多く、大人の落ち着いた時間がそこにはあります。

平日の朝に早起きしてでも訪れるというKanokoのお気に入りは、この店の看板メニューでもあるオーガニックエッグのトースト。スチームで火を通したふわふわのスクランブルエッグをバゲットといただくのですが、プロシュート&パルメザンチーズ、スモークサーモン&クレームフレッシュのどちらも甲乙つけがたい美味しさです。思わず写真に収めたくなるビジュアルもさすが。また、デザートのタルト・タタンも絶品。夜はビストロバーとして、キャロットラペやコックオーヴァン、ムール貝などカジュアルなフレンチ料理をドリンクといただくことができます。

パリの世界観を凝縮させた小ぢんまりとした空間こそがニューヨーク本店ならではの魅力ですが、東京の日比谷ミッドタウンのお店でもこの「Buvette」の美学と食を体験いただけます。ジョディ・ウィリアムズのお店は他にも数軒あり、最近も新しいイタリアンのお店が誕生したばかり。そちらはまたの機会にご紹介しますね。