Vol.91 Streets of VASIC
9月も後半に入り、日本でもようやく秋風らしきものを感じられるようになってきたようですね。ワードローブも少しずつシフトさせながら秋冬のスタイルのイメージを膨らませたら、お出かけの予定を考えたいもの。そこで今回は、芸術の秋を迎えるにあたり、この季節にチェックしたい話題のアートスポットをニューヨークからご紹介します。
New Museum
ダウンタウンのバワリー通りにそびえるNew Museumはもともと実験的な展覧会やインスタレーションを打ち出してきた美術館。2007年に建てられた本館は日本のSANAAによる建築で知られ、箱を積み重ねたようなスリークな外観が特徴です。昨年から拡張のため閉館していましたが、今秋に再オープンが予定され、ニューヨーカーたちの間でも期待が高まっています。
既存の建物に上乗せする形で追加される拡張ギャラリースペースは、数々の名建築を生み出している重松象平氏率いるOMAがデザインを手掛けています。もともとこのミュージアムはAI、デジタル技術、テクノロジーと人間性を探る展示や、フェミニズムに光をあてた展示など未来を見据えた視点を提案してきましたが、こうした先進的なプログラムを実現するにふさわしいスペースになっています。
さらに目玉となるのが、今回初となるフルサービスのレストランの登場です。地元の食材をふんだんに使ったファーム・トゥ・テーブルの料理がいただけるそうです。もともと館内のショップはアートブックや雑貨などおしゃれなものを取り揃えていたので、お土産探しにも重宝しそうです。SOHOからも近く、ダウンタウンでのショッピングの前後にアート鑑賞をという使い方ができそうです。
Studio Museum
ここ10年ほど、アートシーンにおいては黒人アーティストのアートがスポットライトを浴びていますが、そのパイオニアともいえる組織がハーレムにあるStudio Museumです。1968年にアフリカ系アーティストの作品を中心に展示・支援する場として設立され、およそ9,000点の作品を所蔵。今までニューヨークを何度も訪れた方でも、ここに行ったことがある人は少ないかもしれません。
2018年から建て替えのため閉館していたのですが、およそ7年ぶりにこの11月に再オープンを果たします。新しい施設は、ロンドンのデヴィッド・アジャイが設計。幾何学的なフォルムと独特の重厚感をもたせたデザインで知られる名匠とあって、こちらも期待大。歴史が色濃く残るハーレムの街並みにモダンな建物が融合する予定です。
新館では屋上テラスやカフェを併設。ミュージアムのディレクター、テルマ・ゴールデンはアートの主流から排除されがちだったブラックアーティストたちの育成・支援に情熱を傾けてきた人物で、アートシーンのアイコン。彼女に加えて、影響力をもつキュレーターが加わった新体制下で、今後の展示もアートを通じて社会問題に切り込んだ内容が予定されています。
ライティングを使用したインスタレーションで知られるトム・ロイドや、カラフルな作風のデリック・アダムス、抽象画のグレン・ライゴンといったアーティストの作品を生で見ることができるこの場所は、アートシーンの今を体験する上で、欠かせないスポットです!